支部設立10周年の節目を迎えて

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砥粒加工学会関西支部が設立されて今年で10年目を迎えます. 支部としての歴史は10年ですが,前身の関西砥粒加工研究会時代から数えますと51年の長い歴史を持つ国内有数の支部です. この老舗の支部が設立10周年の節目を迎える年に支部長を仰せつかり責任の重さを痛感しております. 支部役員はじめ会員皆様の強力なご支援と温かい応援を頼りにこの1年間頑張って参りますので宜しくお願い致します.

「ものづくり大国日本」の歴史において,砥粒加工学会はものづくり技術の発展を支える上でこれまで多大の貢献をして来た事は, 他の学会が会員数を減らしている中,会員数を維持ないし増加させ続けている事を見ましても明らかです. これも諸先輩方の努力の賜と敬服致しております. しかし,現在のものづくりを取り巻く環境は,団塊の世代の退職による熟練技術者の急減,ものづくりの国内から海外へのシフト, 学生の理科離れによる理系進学者の減少,出生率が2を割る事による若年労働者の減少等大きく変化し,その影響はものづくりに携わる者のみならず, 全国民に圧し掛かっています.

このような日本のものづくり環境の大きな変化に対し,学会活動の内容も変化させて行く事(迎合すると言う意味ではありません)が求められている様に思われます. そして,設立10周年の節目を迎える今年こそが,これまでの学会活動を振り返り,社会環境の変化も見据え, これからの10年の方向性を考えるのに良い年では無いでしょうか? 現在,各学会でも熟練技術者の急減に対応するためにシニア会を設立して退職熟練技術者を活用する手立てや, 学生の理科離れに歯止めを掛けるために,中・高校生対象のセミナーを開催し,理科の面白さを分かってもらう活動などを展開しています. しかし,出生率の低下に対しては,技術開発によるさらなる高能率化やグローバル化による海外人材の活用などの対応手段しか考えられておらず, 出生率低下の歯止めについては別次元の問題として政治に委ねようとするかに見受けられます.

生き物は全て種の繁栄のために活動を続けていますが,日本の出生率が2を割る状況は日本人が種の絶滅に向かって社会活動を続けている事を意味します. それを学会には直接関係無い事として無視していて本当に良いのでしょうか? 私には学会にもできる事があるように思われます.学会の大きな役割の一つに人材の育成があります. これまでは,主に技術的な面に主眼が置かれて来ましたが, これからは製造物責任や環境問題など技術が社会に与える影響をも見据えられるグローバルな広い視野(単に国際通と言う意味ではありません) を持った人材の育成が必要になって来ています.このグローバルな広い視野には, 自分を幸せにするには社会を幸せにするのが一番大切である事を理解できる事も意味します. 最近では仕事に追われ家庭での時間がほとんど無いと言う状況が多く成って来ています. これは,グローバルな広い視野を持て無いために,周りを敵と考えることで必要以上に社会での競争が激化しているためだと考えられます. 本当の意味でのグローバルな広い視野を持った人材を育てる事で社会の過剰競争を治める事ができれば,家庭での充実した時間を作れるようになりますので, 子育てに力を注げるようになり出生率の低下に歯止めを掛ける事に繋がります.

このようなグローバルな広い視野を持った人材を育成するためには,講演会や見学会などの知識の提供だけでは難しく,人との交流を幅広く持つ事が重要です. 関西支部は昔から他の学会に比べ非常に和やかな雰囲気で活動を続けているのが大きな特徴ですので,このような人材育成には最も向いていると言えます. これからのものづくり技術の発展だけで無く,日本の健全な発展を支える将来の人材を関西支部で育てて行きませんか? 学会行事への皆さんの参加はもちろん,若手技術者への積極的な参加勧誘が活動の第一歩です.皆様の支部行事への参加とご協力をお願い致します.

関西支部長 青山栄一