砥粒加工学会の伝統とアイデンティティー

会長の写真

砥粒加工学会は、その前身である砥粒加工研究会の創設以来52年、 そして社団法人になってから13年の歴史を刻んで参りました。 その間、2000年度に関西砥粒加工研究会との合流もございました。 本会は、会員総数が1500に満たない小粒な学会ですが、 生産・加工技術の分野での枢要な学会と認識され、 産業界からも高く評価されています。 また、砥粒加工技術に特化した世界初の学会(JSAT:Japan Society for Abrasive Technology) として国際的にも注目されています。

前身の砥粒加工研究会の創設理念「砥粒加工技術の実学に貢献する」 を継承していることから、 賛助会員(企業会員)の比率が他学会に比べて抜きん出て高く、 特に財務の面で本会をささえて頂いております。 また、学術講演会や研究会などへの中小企業からの参加意欲も旺盛です。 さらに、賛助会員を束ねた賛助会員会では、 会員のための各種催しを行うなど、一般の学術団体とは一味違った活動をしております。

また本学会は、比較的狭い分野を志す研究者・技術者の集まりであるだけに、 会員間の連帯感が強く、 相互に啓発しながら学び合う、和気あいあいとした雰囲気があり、若い会員にも、 のびのびと活動していただいています。 学会は、とかく敷居が高い、あるいは閉鎖的と思われがちですが、 気軽に集まれる"サロン"を形成しているのが、 本学会の特徴であり伝統でもあります。

法令改正に伴う公益法人への移行

法人法の改正に伴い、本学会は昨年12月から「特例法人」に移行しており、 今後5年の間に公益社団法人になるか、 一般社団法人になるかの選択をしなければなりません。 今期理事会の大きな仕事の一つは、任期中に本会が「公益認定を受ける」にある、 と申し渡されています。 公益法人化のメリットは、① 会務運営の透明性・公正性が高まること、 ② 学会の社会的なステータスが高まること、 ③ 本法人に対する寄付行為に対し、大きな税制上の優遇措置が与えられること等です。 そこで前期理事会は、新しい法令に則った「定款改正の案」を決定し、 これを3月6日に開催された平成21年度第1回通常総会に上程したところ、 正会員の3/4を上回る多数の賛成によって承認されました。 今後は、定款案に則った規程・内規類を整備するとともに、 財務関係書類などを整え、今年の努めて早い時期に、 公益認定の申請をする予定にしております。

会員の皆様の意見を伺いながらこのような手続きを進めるため、 規程類の案や財務関係の書類を順次ホームページに掲載する予定にしております。 会員の皆様には、是非興味を持ってご覧いただき、 ご意見をお寄せ頂きたいと存じます。

経済情勢の激変への対応

今、世界中の多くの企業が不況のためにその活動を萎縮させており、 各国政府はこれに対処するため、大規模な不況対策に乗り出しています。 しかし、金融危機の打撃は大きく、数年はこの不況が続くことが予想されます。 先輩諸兄の五十数年の努力によって、学会の組織と財務基盤が強化されており、 これを拡充して後進に引き継ぐのが本来の使命ですが、 残念ながら従来の取り組みや発想では立ち行かない事態に突入しているとの感があります。 今期理事会としては、このような状況を乗り切るため、会員とりわけ賛助会員の維持・獲得、 会務の効率的な運営、各事業のさらなる活性化・魅力化に努める所存であります。 既に多くの会員の皆様に、各種委員、オーガナイザ、事業の支援などをお願いしておりますが、 このような時にこそ活発な活動を展開して頂きたいと思います。 また、一般会員の皆様にも、積極的に各種活動にご参加頂き、 本会の活動を盛り上げて頂きたいと存じます。

先日、トップクラスの流通グループ会長が「不況の嵐が通り過ぎるまで、 身を縮めていればまた好況が来て、元の企業活動が再開できると考えたら大間違いで、 時代のニーズに合った新しい取り組みが求められる」との趣旨の発言をしていました。 企業所属会員や賛助会員の皆様には、大変な時期と思いますが、このような「時機」にこそ、 好況では採れなかった優秀な人材を確保し、技術をしっかり伝承し、 あるいは更に磨きをかけ、かつ落ち着いて次への戦略を練るチャンスでもあります。 本学会が、このような皆様の活動に少しでも貢献できるよう、 役員一同知恵を絞っていきたいと考えております。そのためにも、学会運営への忌憚のないご意見、 あるいはご要望をお寄せ頂きたくとともに、ご支援を宜しくお願い致します。

日本経済を支える"ものつくり"技術の支援

エネルギー・工業材料費の高騰、環境問題の切迫、労働コスト高とこれに起因する産業の空洞化、 高齢化と少子化、さらに困難に輪をかける政治の貧困など、 この度の大不況の前から日本の製造業を取り巻く環境は厳しいものがありました。 このような中、第一級の"ものつくり"技術を培う以外に日本の将来はありません。 本学会は、21世紀の"ものつくり"技術の発展に貢献するために、 上記の活動と併せ、幾つかの施策を推進します。

その一つは、学会活動のグローバル化です。 例えば、国際砥粒加工会議(ICAT:International Committee for Abrasive Technology)を通じ、 先端砥粒加工技術に関する国際的なシンポジウム (ISAAT:International Symposium on Advances in Abrasive Technology)を毎年開催し、 世界の砥粒加工技術発展の中核として、指導的役割を果たして来ました。このような活動を通じて、 世界の先端的な"ものつくり"技術に関わる人と情報が集う場を提供いたします。

二つめは、産業界との連携と新たなテーマの発掘です。同じ興味を持つ仲間の中だけに留まらず、 積極的に他分野、他領域との接点を探り、より広い視点から砥粒加工技術を捉え、 あるいはこれを活用できる場を探る"学際化"を検討しています。 また、本学会の特性を生かして、産・官・学連携の橋渡しに任ずるとともに、 現場に密着した生産技術の向上を目指して、 地域の産業グループとの連携を拡大・強化したいと考えております。

三つ目の取り組みは、若手研究者・技術者の育成であります。 我国は"ものつくり"教育の重要性を唱えているにも拘らず、大学をはじめとする教育機関では、 それに関わるカリキュラムや定員の削減、あるいは研究室の統合が進められています。 本学会の社団法人化10周年を記念して「図解 砥粒加工技術のすべて」を発刊しています。 これが、テキストとして"ものつくり"技術の教育と継承にお役に立てることを願っています。 昨年度は、主に若手技術者を対象とした加工技術の総合講習会(グラインディング・アカデミー)を再開した所、 非常に好評でした。今後は、これを継続・強化するとともに、若手研究者・技術者の集いである、 「次世代ものつくり技術研究会(通称、山椒魚)」の活性化と相まって、 次代を担う研究者・技術者の育成に貢献したいと考えております。

以上、砥粒加工学会の概要と活動の一端をご紹介しましたが、当学会の主旨にご賛同いただき、 ひとりでも多くの技術者・研究者、そして企業・団体にご入会いただくことを願っております。 また、会員の皆様が現下の逆風にめげず、活発に活動していただくことを祈念しております。

社団法人 砥粒加工学会
会 長 防衛大学校教授 奥山 繁樹